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週次レポート アーカイブweekly REPORT archive

週次レポート(プレビデンティア・ウィークリー)


2015年3月

3月29日「GBP:二枚舌通貨には二枚舌戦略」
<要約>
英経済およびポンドを巡っては、二つの相反する要素が混在している。インフレに関しては足許のデフレリスクに対する将来の急反発の可能性、英経済に関しては高成長と経常赤字、金融政策に関しては利上げ派と利下げ議論、選挙を巡っては保守・労働党の拮抗および二大政党制と多党制、EUを巡っては加盟か離脱か、そしてポンド相場の対ドルでの弱さと対ユーロでの強さ、などだ。こうした中では、当面はポンド高材料にはユーロ/ポンドで、ポンド安材料にはポンド/ドルで取引するのがよさそうだ。


3月22日「USD:天気が転機に?」
<要約>
3月FOMCでは景気認識の下方修正、FF金利予測の大幅引下げやドル高の影響への言及があったことから、発表後にドルが全面的に下落した。もっとも、足許の景気鈍化は天候要因で一時的である可能性が高く、また米国の輸出や貿易収支にはドル高の影響が殆ど現れておらずドルも長期的に割高とはいえない。これらを踏まえると、FOMC後のドル安は今後の天候回復とドル反発を睨んだ押し目買いの好機とみるべきだろう。


3月15日「円は安いのか:中小企業VS高齢個人投資家」
<要約>
昨年10月末以降の急ピッチの円安化でドル/円が120円を超え割高感が出てきたことで、本邦政財界は円安懸念を示し始め、日銀もインフレ目標達成遅延によって円安化を抑えてきた。但し、ECB量的緩和を受けたユーロ急落をはじめ、多くの国で金融緩和を受けて通貨が下落し対ドル以外では円高が進行していることから、円の貿易加重平均相場は今年入り後にむしろ小反発している。更に、特に高金利通貨を重視した円相場は実に13年半ば以降殆ど円安化していない。為替政策は、中小企業に重きを置くか、高金利通貨へのエクスポージャーを持つ高齢化する個人投資家に重きを置くかで、今後取るべき方向性が大きく異なってきている。


3月9日「ドル/円と日経平均:愛(相関)が壊れるとき」
<要約>
アベノミクスの下でドル/円相場と日経平均株価の連動性が非常に高まり、両者とも概ね上昇基調で推移してきた。もっとも、ドル/円は割高水準に来ている一方で日経平均は未だ割安水準にあること、更なるドル/円の上昇が一部セクターの悪材料となり得ることなどを踏まえると、今後ドル/円と日経平均の連動性が低下する可能性もある。


3月1日「スイス中銀の美学:わけのわからなさ?」
<要約>
スイスフランは1月15日の「SNBショック」を受けた急騰後、対ユーロ、対ドルでじり安傾向となっている。米景気の堅調と利上げ見通しを受けたドル高基調、およびギリシャ懸念の後退を受けたユーロ持ち直し地合いもあって、スイスフランは今後数か月間、軟調に推移するとみられる。但し、来年にかけてECBの追加緩和が視野に入ってくると、スイス中銀はフラン高阻止をいずれ諦めるという前例が想起されフランの投機的な買い圧力が以前にも増して強まり、制御不能に陥るリスクを孕んでいるため、注意が必要だ。


2015年2月

2月22日「ドルは強くない」
<要約>
米景気が堅調を続け、金融政策面でも米国の相対的なタカ派が目立つ中で、米ドル高傾向が続いている。こうした中、米企業決算においてドル高を受けて業績を下方修正する動きもあり、米当局がドル高懸念を示すのではとの見方が出てきているようだ。もっとも、長期的にみれば米ドルはどちらかといえば割安圏にあり、米当局があからさまなドル押下げ政策を行うリスクは低い。そうすれば、日欧でデフレ圧力を高め、追加緩和を誘発しドルはむしろ反発に向かうというネガティブフィードバックループも想定される。


2月14日「イスラム国:掃討は相当困難?」
<要約>
邦人を含む欧米人の人質殺害が増える中、Obama米大統領はISIL(イスラム国)掃討に向けて従来の空爆に加えて地上軍を投入する正式な武力行使の許可を米議会に求めている。これまでのところイスラム国問題がドル/円など主要通貨・その他金融市場に大きく持続的な影響を与えている形跡はないが、今後の事態の進展次第で考えられる影響を纏めてみた。


2月1日「新興国通貨:夜明け前が一番暗い?」
<要約>
ユーロ、豪ドル、カナダドルなどの主要通貨が大きく下落している一方、南アランドやブラジルレアルなどの新興国通貨は比較的小幅な下落に留まっている。南アやブラジルでは中銀はタカ派姿勢を維持していることが背景にある模様だが、年前半は売り圧力が続きそうだ。反発に向かう機運は、米利上げペースが緩慢であることの確認、原油価格の底入れ、トルコ統一地方選通過、日銀の再ハト派化、の可能性が出てくる年央以降となりそうだ。


2015年1月

1月25日「GBP:明るくなるまで待って」
<要約>
英景気の好調にも拘らず、ポンドは対ドルで下落を続けている。原油安を背景とした利上げ期待の後退と、今年5月の総選挙に関する不透明感の高まりが主因とみられる。このため、原油価格が反発しインフレ率が大きく回復するか、総選挙後の政治的安定が展望できるまでは、ポンド/ドル相場は低迷が続きそうだ。


1月18日「EUR:分裂ある所に和合を、デフレある所にQEをA」
<要約>
ECB量的緩和期待に加えて足許のユーロ下押し要因となっているのがギリシャ懸念再燃だ。1月25日の総選挙での急進左派連合(SYRIZA)勝利の可能性が高まる中、ギリシャ支援交渉の期限も2月末に迫っており、ギリシャのデフォルトリスク、ユーロ圏離脱リスクが意識され易く当面はユーロ下押し圧力となろう。もっとも、SYRIZAおよびギリシャ国民はユーロ離脱を必ずしも望んでおらず、結果的にはユーロ残留が選択され、一時的なユーロ買戻しに繋がりそうだ。とは言え、ユーロ圏景気低迷・デフレ懸念の高まりとそれに対する量的緩和がユーロ安の根本的な要因であるため、ギリシャ懸念が後退してもユーロ安基調は続こう。
  

1月11日「EUR:分裂ある所に和合を、デフレある所にQEを@」
<要約>
ユーロ圏インフレ率のマイナス化もあって市場の量的緩和期待が更に高まったほか、忘れかけていたギリシャ情勢の不安定化も重なったことから、ユーロ/ドルは下落が加速した。ギリシャ政治情勢の混乱や実際の量的緩和導入で更に下落する可能性が高まっている。もっとも、ギリシャのユーロ圏離脱回避や、ECB量的緩和の規模やスピード如何ではユーロが下げ渋るリスクも残っている。今回のユーロ関連第1弾では主に量的緩和に絞って議論する。


2014年12月

12月27日「AUD:Vorsprung durch Politik? 反発は金融政策待ち?」
<要約>
豪ドルは鉄鉱石価格の続落に加えて、RBA利下げ期待が急速に高まったことから、一時0.80ドル台へ下落した。市場の利下げ期待は行き過ぎとみられ、一時的にショート巻き戻しが入る可能性がある。もっとも、豪州で失業率が低下基調に転じ、非鉱業セクター経済の回復が明確になり、RBAの利上げが視野に入ってくる来年後半までは、豪ドル/米ドル相場は鉄鉱石価格に左右されつつも、米利上げ開始時期前倒しを睨んだ米ドル高もあって、下落基調が続きそうだ。


12月21日「GPIF:円売りの先導役はいつまで?」
<要約>
10月末に発表されたGPIFの外国証券投資大幅増は、日銀のサプライズ緩和と並んで、政府・日銀の一丸となった円安政策の重要な一翼を担ったが、既に発表前である今年7-9月期に外国証券投資が大幅に増加していたことが分かっており、今後も需給面での円安圧力として市場で強く意識されそうだ。但し、今後、円安が更に進行し、弊害がより強く意識されてくると、円安圧力軽減策として、日銀の金融政策の調整や円買い介入より先に、GPIFの外貨投資スタンスの微調整が行われるリスクがある点には注意する必要がある。


12月6日「SEK:リクスバンク・リスク」
<要約>
スウェーデンクローナは政治・経済的な要因を背景に対ユーロ、対ドルで下落基調が続いてきた。特にインフレ率が直近マイナスで欧州主要国の中でも最も低い中で、追加緩和の必要性が高く、クローナには下押し圧力がかかり続けそうだ。もっとも、目先は、ユーロ圏の方が量的緩和導入で先行する可能性があり、来年初にかけて一旦クローナが強含むリスクがありそうだ。

2014年11月

11月29日「原油と為替:バレルに順バレるのは?」
<要約>
OPEC総会での減産見送りを契機に原油価格が更に急落している。現在までのところ、円やトルコリラなど原油輸入国通貨は恩恵を受けていない一方、ロシアルーブル、メキシコペソやカナダドルなど原油輸出国通貨が強い売り圧力を受けている。今後、原油は売られ過ぎから反発する局面もあるかもしれないが、原油を材料に取引する場合、輸入国通貨よりも輸出国通貨、特にカナダドルとメキシコペソに注目すべきだ。


11月24日「来年の主要通貨戦略:四字熟語で勝負」
<要約>
来年の主要通貨は、金融政策面で利上げ先行開始通貨(USD、GBP)と追加緩和通貨(JPY、EUR)の強いコントラストに注目した「雲泥万里」取引に加えて、金融政策の方向性は同じだがタイミングの違いに着目した「針小棒大」取引(USD対GBP、EUR対JPY、USD対CAD)にも妙味がある。コモディティ通貨(AUD、NZD)は、年前半はコモディティ価格次第で運命が決まる「行雲流水」取引として捉えるとよさそうだ。


11月16日「新興国通貨:救世主降臨」
<要約>
ブラジルレアル、南アランド、トルコリラ、メキシコペソなど主要な高金利・新興国通貨は、米利上げ観測を受けた米ドル高の影響に加え、各国の政治経済要因から売られ易い状況が続いている。もっとも、本邦政府・日銀の一体的な円安志向の強まりによって、対円では小幅ながら上昇基調を維持でき、日本からだけでなく世界の投資家からも円キャリー取引を通じて資金流入を確保できる可能性が出てきた。


11月9日「JPY:限界を試す」
<要約>
日米当局はドル高円安をもたらすことを分かったうえで確信犯的に金融政策スタンスを決定している。こうした中、ドル高円安が日米景気やインフレ率に著しい悪影響を与えるまでは、金融政策の転換やドル売り円買い介入などの抜本的なドル高円安阻止策は取られない可能性が高い。市場は日米経済と日米当局の限界を試すべくドル買い円売りを続けるとみられ、前回のドル売り円買い介入水準である125〜130円程度まではオーバーシュートしそうだ。


11月2日「JPY:パーフェクトストーム」
<要約>
10月FOMCのタカ派化から程なくして、日銀が予想外の追加緩和を決定、更に同日に公的年金(GPIF)が運用改革案を発表し外国債券・株式比率が40%へ引上げられることになった。いずれも当社の想定外だが、日米金融政策のコントラストの強まりに需給要因が加わり、ドル/円相場にとってはまさに上昇のパーフェクトストームといえる。年内115円、来年120円が視野に入ってきた。


2014年10月


10月26日「EUR:他力本願から脱せるか」
<要約>
7月以降、ECBの断続的な追加緩和や米国の利上げ開始早期化期待の高まりなどから、ユーロ/ドル相場は1.25ドルへ急落した。今後も景気低迷・ディスインフレ懸念の中で量的緩和導入への期待感が強く、ユーロ続落を予想する向きが多い。もっとも、ユーロに影響力があるドイツ2年債利回りは既にこれ以上下がらない水準へ低下していることから、ユーロ押下げには他国の金利上昇だけでなく、長期金利を押下げるかたちの量的緩和が必要となりそうだ。但しこれには幾つかのハードルがあり、量的緩和実施が遅れそれを前提としたユーロ安が実現しないリスクが残っている。


10月18日「投資戦略再考:悲観の先にあるもの」
<要約>
10月半ばに入り世界景気減速懸念が急速に台頭し、米株価が大幅に調整する中で為替市場でも9月以降のドル高が急速に反転した。但し、米国主導の世界経済加速シナリオ自体が大きく崩れている訳ではなく、市場は落ち着きを取り戻すというのがメインシナリオだが、世界経済の減速リスクが高まり、市場がそれに敏感になり始めたのも事実で、悲観シナリオの実現確率が高まったように見受けられる。このため、楽観シナリオ、悲観シナリオの各々の背景を確認した上で万一の事態への心の準備を試みる。重要なのは、悲観論の高まりは震源地であるユーロ圏と中国の当局による政策対応の可能性を高める点だ。


10月11日「AUDとNZD:反転は似て非なるものに
<要約>
豪ドルとNZドルは類似した面が多いことから同様に動くことが多く、実際9月以降の米ドル高局面でも、それまで両通貨とも高止まっていたこともあり、ファンダメンタルズへのキャッチアップもあって主要通貨の中では下落率が最も大きくなっている。但し今後反発に向かう際には、NZドルは反発要因が見当たらない一方、豪ドルはインフレ上振れリスクと為替政策スタンスの変化の面で、NZドルに先行する可能性が浮かび上がる。


10月4日「ブラジル大統領選:僅差に芽生える光明」
<要約>
10月5日の大統領選を巡って一旦は低下していたルセフ現職大統領再選の可能性の再燃への失望感が、世界的なドル高により拍車をかけられ、9月入り後にブラジルレアルが急落した。直近の世論調査が示唆するシナリオは、10月26日の決選投票でルセフ大統領がシルバ候補に勝利するというもので、レアル続落の可能性が高いが、僅差での勝利は、野党が主張する企業・市場寄りの政策を一部採用する可能性を高めるため、レアル反発のチャンスとなり得る。


2014年9月

9月27日「USD:FedのBoE化リスク」
<要約>
今後の米FOMCの利上げ開始に向けては、米景気の進展につれて、FOMC内で多数派である理事らが、ハト派をいかに多く利上げ開始容認に取り込めるかどうかが重要となる。但し、米景気の改善が加速しない場合や、ドルや米金利が必要以上に上昇する場合には、賃金など弱い指標をフォワードガイダンスに含めて実質的に利上げを遅らせる「BoE化」を行う潜在的なリスクも意識しておく必要があるだろう。


9月21日「ドル/円:デジャヴュか、ジャメヴュか」
<要約>
9月の米FOMCでは、参加者のFF金利見通しが引き上げられたことからドルが続伸、実際の利上げ開始まで半年程度はかかる時点での上昇ペースとしては異例だ。前回2004年から2006年の連続利上げと類似する可能性が高まっているが、当時のドル/円相場をみると、1%ポイント超の利上げの過程でむしろ下落している。FOMC声明文はむしろハト派化していたことや、国内政財界から円安警戒が出てくる可能性を踏まえると、長期的にはドル高円安方向に向かうにしても、短期的な調整リスクの高まりにも警戒する必要がある。


9月13日「円安牽制:敵は己の内にあり?」
<要約>
8月後半以降、ドル/円が昨年4Q並みの急ピッチでドル高円安が進行し、2008年9月以来の107円台に乗せてきている。米早期利上げ開始期待を背景としたドル高が主因だが、追加緩和やGPIFの外貨投資増加への期待を受けた円安圧力も働いている。こうした中、9月20-21日および10月9-10日にG20財務相・中銀総裁会合を控えていることから、110円へ更に円高が進む場合には、過去の円安局面のように海外から円安牽制が行われるリスクだけでなく、本邦政財界からも、小売業界などで円安のデメリットが顕現化してくるようだと、円安警戒論が出てくるリスクもあり注意する必要があるだろう。


9月8日「ドル/円:少し行き過ぎた愛情の記録」
<要約>
夏場の円高傾向にも拘らずドル/円は100円を割り込まず、むしろ8月後半以降、俄かに米国の利上げ開始早期化期待が高まり、ドル/円はようやく2月以降の102円を中心としたレンジ相場を抜けつつある。日本の異次元緩和だけでなく、米景気回復を利上げに向けた動きも続くとみられ、来年にかけてドル/円が110円へ上昇する可能性は高まった。とは言え、足許の米国の利上げ開始早期化期待は行き過ぎで、年末までにドルが一旦調整するリスクも高まっている。


2014年8月


8月31日「「リスクオフ」の解体新書」
<要約>
ロシア・ウクライナ情勢や米国によるイラク空爆などの「地政学リスク」を受けた「リスクオフ」が為替市場に一定の影響を及ぼしている。もっとも、金融市場では通常の経済ファンダメンタルズ要因からくる変動も起きていることから、地政学リスクを受けた影響が分かりにくくなっている。このため、そもそもの「リスクオン」「リスクオフ」が為替市場に及ぼす影響を3つに分類した上で、3種類の「地政学リスク」について特殊要因も考慮しつつ、一般的な「リスクオフ」に波及するチャネルを分析する。


8月23日「GBP:パラノからスキゾへ」
<要約>
ポンドは7月までは早期利上げ開始期待を背景に比較的順調に上昇し、今でも景気面で他の主要国対比でのアウトパフォームが継続、早期利上げ期待の再燃の可能性は依然として残っているが、ここにきてBoEからのコミュニケーションがコロコロ変わり全く一貫性に欠けることから、短期的に明確な方向性を持ってトレードするのは得策ではなくなった。特にポンド/ドルは英米のコントラストが弱まっていることから方向感が失われており、ポンド高見通しを背景とした長期の取引は、ユーロ/ポンドの方がいいだろう。


8月16日「G4通貨:年内のカタリスト・リスト」
<要約>
日米欧で金融政策面からの動きが出にくくなっている中、夏季休暇シーズン中ということもあり、G4通貨は行き場を失っているかに見える。このため、年末までの各通貨の変動要因となりそうな注目材料(カタリスト)を列挙し纏めておく。中では、米国のインフレ率、日本のGDPと追加消費増税の有無、ユーロ圏の五月雨式テルトロ、そして英国では賃金が特に注目だ。


8月10日「円:GPIFパラドックス」
<要約>
GPIFの運用改革の議論が再び高まり、ドル/円相場の下支え要因となっているようだ。運用改革により日本株投資比率引上げに伴って外貨資産への投資も増え、かつGPIF以外の年金基金も追随するという期待が高まっている。とは言え、外貨資産投資がどの程度増えるかは非常に不透明で、また一気にシフトする訳ではなく数年かけて分散して行われるため、インパクトはあってもかなり薄められる。更に、円安→株高という因果関係が崩れつつある中で、海外投資家の日本株買いが従来のように円売りヘッジを伴わず、対日株式投資がそのまま円買い・円高圧力となるリスクが高まっている。


8月2日「NZD:覆水お盆後も返らず」
<要約>
7月までは4回連続利上げを背景に主要通貨をアウトパフォームしてきたNZドルだが、RBNZが利上げ休止期間入りしたほか、乳製品価格の下落が止まらないこともあって、NZドルの下落基調が鮮明となってきた。今後、米利上げ開始時期の議論の高まりを受けた米ドル高がNZドルの対米ドル相場の続落に繋がるだけでなく、足許不安定になってきている米株価のボラティリティ上昇も、NZドル安圧力となる。


2014年7月

7月26日「EUR:テルトロ、トロトロ」 
<要約>
6月にECBが包括的な金融緩和政策パッケージを発表して後、ようやく7月に入ってからユーロ安基調が鮮明となってきた。これまでのユーロ安効果は主に利下げを受けた金利低下による面が大きかったが、9月以降はTLTRO(テルトロ)を通じたバランスシート拡大効果も出てくるほか、英米の利上げ開始機運の強まりも、対ポンド、対ドルでのユーロ下落圧力を更に強めることになるだろう。とはいえ、バランスシート拡大ペースはゆっくりであるため、ユーロ急落は望み難いかもしれない。


7月19日「GBP:スコッチお油割りは微妙なテイスト」
<要約>
9月18日に英スコットランドの独立の是非を巡る住民投票が実施される。現在のところ世論調査では独立反対派が優勢で、メインシナリオは独立反対派が勝利し結果判明後に安堵感からポンドが若干買われる展開だ。もっとも、賛成派が勝利する可能性も残っており、その場合にはポンド売り圧力がかかるだろう。スコットランド独立の場合のポンドへの持続的影響については、英ポンドを使い続けられるのかや、北海油田や財政、経常収支の分割に関する英政府との交渉に依存し、現時点では不透明な部分が大き過ぎ判断が難しいのが実情だ。


7月12日「米株価(S&P)とポンド(Sterling Pound)」
<要約>
米企業の4-6月期決算発表が佳境を迎える中、日米欧ともに景気・金融政策面で手掛かりを失っていることもあり、為替市場が株価を睨んだ動きとなる局面が増えるだろう。米株価との関係性が深い通貨ペアとしては、ポンド/円が高い相関性を示しているほか、トルコリラ/円は株価の変化に対して感応度が高く、取引妙味のある通貨ペアだ。


7月5日「GBP:タカ派の多寡
<要約>
6月12日にCarney総裁が市場予想よりも利上げが早い可能性に言及して以降、BoEの年内利上げ期待が一気に高まり、ポンドの年初来高値更新が続いている。実際の利上げ開始は早くて今年11月頃とみられるが、利上げ開始に向けては毎月の金融政策委員会で少数ながら利上げ主張の票が見られ始める可能性が高く、今後は議事要旨への注目度が急速に高まる。当社は最もタカ派的な3名の委員のいずれかが7月にも利上げ主張を開始し、その後数回で利上げ派が増え実際の利上げ開始に至るとみており、利上げ主張の増加につれてポンドは続伸するだろう。


2014年6月

6月28日「USD:敗因と復活の条件」
<要約>
年初来、多くの市場参加者の予想に反してドルが上がらず、足許は上値の重さが強まっている。その背景には米国債の好需給を受けた米名目金利の低下、米インフレ率の上昇と米実質金利の低下、そして不安定な米経常赤字ファイナンス構造、などがある。今後、Fedが来年初以降に利上げを開始し、それに伴ってドルが明確に上昇トレンドに向かうには、米国の名目金利上昇だけでなく、実質金利の上昇、米景気加速に伴い海外からの対米株式・社債投資が増加し経常赤字ファイナンスが安定化すること、更に米国内でも債券から株式への資金シフトが起こり米国債の需給が悪化することも必要だ。


6月21日「Loony Loonie ─ 狂ったカナダドル?」
<要約>
経済はぱっとせず金利も低いにも拘らず、カナダドルは堅調に推移しており、4月以降では主要通貨の中でポンドを凌いで最大の上昇率を誇っている。もっとも、これまでの上昇は新興国通貨の急落後の持ち直しや一部原油価格の上昇につれた表面的な上昇に過ぎない。足許高まるカナダのインフレ率も、景気回復が緩慢な中で早期利上げには繋がりにくく、通貨安を志向するカナダ中銀が米国より早期に利上げに踏み切る可能性は相当低い。対米金利差から乖離した上昇は長続きせず、カナダドルは反落に向かう可能性が高いとみられる。


6月14日「伝統(的金融政策)に強い英国
<要約>
低インフレを主因に長期に亘り低金利を維持するとしてきた米国でインフレ率がようやく上昇し始めたほか、英国でも好景気と住宅市場過熱の中、BoE総裁が市場に対して利上げへの心の準備を促すなど、やや気が早いが英米で徐々に利上げに向けた地ならしが始まりつつある。非伝統的金融政策(資産購入)から伝統的金融政策(金利操作)に重点がシフトすると、為替市場もより短期の金利に反応し易くなってくる。当社の分析では、英米の利上げ(期待)で最も大きく動く可能性がある通貨ペアはユーロ/ポンドとポンド/円だ。


6月7日「BRL:働く通貨はキャリーだぜ」
<要約>
成長率鈍化、サッカーW杯開催の景気への悪影響や反政府デモなど、ブラジルを巡るニュースはポジティブなものがあまりない。もっとも、レアル相場は比較的安定しており、特に高い金利を考慮すると、キャリー取引通貨としての相対的な魅力は高い。10月の大統領選や来年にかけての米利上げといったイベントリスクがあるものの、他の新興国通貨と比べてリターンを確保しやすいとみられる。


2014年5月

5月31日「マクロテーマ:Janet, what have you done for EM lately?」
<要約>
昨年前半以降の「グレート・ローテーション」のテーマの下での債券から株式へという資金シフトと同時に、米国経済の再加速、中国経済の減速を背景に「新興国から先進国へ」という資金シフトの動きも起き、今年1月にかけて新興国通貨売りが加速した。その後最近まで、新興国通貨は悪材料にも拘らず買い戻されたが、多くの国で根本的な問題解決が進まない中、買戻し局面は一服しつつある。今年末から来年にかけて英米で利上げ開始が予想される中、当社は今後、新興国から先進国への緩やかな資金シフトが再開するとみている。


5月24日「マクロテーマ:部分ローテーション」
<要約>
昨年以降、金融市場全体のテーマだったはずの債券から株式へという「グレート・ローテーション」は、今年入り後、欧米の長期金利低下で完全には実現しなかった。もっとも、中期債利回り上昇と株高は起きており、部分的に実現している。年末にかけて、英米の利上げ期待が高まると株価調整が起きるかもしれないが、あくまで一時的なローテーション休止だろう。主要国の景気回復が継続し、来年後半にかけて主要国中銀のバランスシート縮小が視野に入ると、本格的な株高・債券安に向かうだろう。こうした中、ポンド高が継続するほか、今年末以降はドルも復活していくだろう。


5月17日「豪ドル:熊(ベア)はいても子守熊(コアラ)?」
<要約>
豪経済指標の相次ぐ予想比上振れを受けて、1月に安値を付けていた豪ドルは4月にかけて大きく反発した。但しここへ来て、豪ドルの主要変動要因の多くが、再び豪ドル安方向に傾いてきている。急落とはいかずとも、豪ドルは反落に向かう機運が高まっている。


5月10日「ポンド:MとF、どちらが支配?」
<要約>
ポンドの堅調が続いている。英国景気の好調を背景としたBoEの早期利上げ期待が背景にあり、来年初あたりまでは特に対ドルで上昇傾向が続きそうだ。今後のカギとなる英国の金融政策の展開については、BoEの金融政策委員会(MPC)が決定する金利政策、量的緩和政策もさることながら、金融安定政策委員会(FPC)が決定するマクロプルーデンス政策の住宅市場や景気への影響にも注意する必要があり、目先はMPCよりも次回6月17日のFPC会合が注目だ。


5月2日「円高に対する生命保険」
<要約>
残存する円安期待の背景として、日銀追加緩和期待、GPIFの対外投資拡大に加えて、生保の対外投資を挙げる向きもあるようだ。但し、生保の対外投資の年度内の月次パターンや、円相場の方向性との関連でみると、今年度中のドル/円押上げ効果は期待薄だ。夏場の円高局面での押し目買いはあるかもしれないが、為替ヘッジ外しに伴う本格的なドル買いはFedが利上げを開始する2015年央以降だろう。


2014年4月

4月25日「円:TPPに絡む円売りは後退へ」
<要約>
Obama大統領訪日を機にTPP交渉進展の期待が高まったが、為替市場では期待で円安になった局面は殆どなかった一方、失望で円高になった局面はあった。市場では日本のTPP加盟は円安・株高要因とみられているようだが根拠は薄弱で、仮に日本のTPP加盟が決定したとしても短期間で大きな効果が出る訳ではない。地政学リスクや夏場にかけての円反発リスクを踏まえると、TPP期待で円安化する局面があるとすると、ドル売り円買いの機会と捉えた方がいいだろう。


4月19日「EUR:円化の花道を回避できるか」
<要約>
ユーロは大方の下落予想に反してしぶとく堅調を維持している。確かにユーロ圏の経常黒字体質や債務危機の後退はあるものの、最大の要因はユーロ圏の実質金利高という、かつて日本が円高局面で体験したインフレ低下による望まざる通貨高という面が強い。これを回避するにはECBによる大規模な量的緩和が必要で、漸く機が熟してきたとみられる。今年の後半にかけてECBによる「周回遅れの」量的緩和が行われることにより、ユーロはついに下落に向かうだろう。


4月11日「ZAR:地滑り的勝利(landslide)よりランド安(Rand-slide)」
<要約>
南アランドは昨年に最もパフォーマンスの悪い通貨の一つで年初まで続落が続いたが、2月以降は大きく持ち直し、4月入り後もドル安や季節的なランド高傾向も相俟って続伸している。もっとも、5月7日の南ア総選挙が近づくにつれ投資家の不安が再び高まるリスクがあり、また南アが抱える多くの問題が未解決のままであることから、今後は再びランドの売り場を探る機会となろう。月次変動パターンをみても、4月の上昇から一転して5月は下落傾向がある。


4月5日「円:GPIFの失望リスク」
<要約>
運用資産129兆円で世界最大の年金基金であるGPIFによる債券から株式への運用シフトに関する議論が高まっており、為替市場でも外国資産投資の増加期待から円安要因として期待されている。もっとも、基金全体の資金規模が増えない中では、円を大きく押し下げる効果を出すには、大規模な日本国債売却を短期間に行う必要がある。この場合、日銀の資産購入の倍増とパッケージで行われれば何とかなるかもしれないが、財務省からの反対も強まるはずだ。このため、将来的に国内債券比率を大きく引下げるにしても長期間をかけることになり、外国証券や株式の購入に使われる資金はすぐに大規模に増加しないだろう。夏場にかけて、徐々に市場参加者、特に海外勢の失望につながり円買戻しリスクが高まるだろう。


2014年3月

3月28日「NZドル:羊飼いたちの沈黙はいつ破られるか」  
<要約>
NZドルの快進撃が続いており、G10主要通貨の中で最も年初来上昇率が高いだけでなく、貿易加重平均ベースで歴史的な高水準に達している。NZ景気の好調と先進国初の利上げ開始が主因だが、利上げはサプライズではなかったにも拘らずNZ短・中期金利が上昇していることや、RBNZがNZドル高牽制を控えていることがサプライズだ。4月にかけては季節的な追い風もあって一段高もあり得る。もっとも、既に1%ポイントの追加利上げは織り込まれてきているほか、NZの主要輸出品目である乳製品価格の下落見込み、RBNZのNZドル高牽制再開リスクや連続利上げの住宅バブル破裂や景気抑制効果などから、年後半からは反落に向かうだろう。

3月22日「フラン高と不動産バブル」

<要約>
スイスフランは対ユーロでは上限が設定されているが、対ドル等では自由に変動しており、足許ではウクライナ情勢を受けた対ドルでのフラン高を主因に貿易加重平均ベースでも上昇基調が続いている。かつてはユーロ圏債務問題を背景としたスイスへの資金逃避がフラン高の主因だったが、最近はユーロ圏債務問題の後退にも拘らずフラン高が続いている。では何がフラン安をもたらすだろうか?当社はスイスの不動産バブル崩壊がその契機となる可能性があるとみている。


3月14日「Crime(a) & Punishment:クリミア版『罪と罰』」
<要約>
クリミア自治共和国のロシア編入を巡る住民投票で、賛成多数の場合にはリスク回避の動きが更に強まり、ルーブルその他中東欧通貨が下落圧力を受けるほか、ドル/円も米長期債利回り低下圧力を通じて売り圧力を受け易い。天然ガスや原油価格を通じた為替への影響は限定的だが、金価格上昇が、比較的連動性が高いドル/円の追加的な下押し圧力となるリスクがある。他方、投票結果如何に拘らずロシアがクリミア併合に動かない場合には、中東欧通貨やドル/円の上昇に加えて、ユーロ/フランの上昇余地が大きくなるとみられる。


3月7日「主要通貨見通し:DOLDRUMS(ドルのスランプ)」  
<要約>
記録的悪天候を受けた米景気の低調、中国当局の高成長維持姿勢、ユーロ圏と豪州の予想以上の景気回復など、当社がこれまで想定していた前提条件が変化したことを踏まえ、今年の主要通貨予想を修正する。ドル/円は3月に想定していた高値を108円から105円へ、7-9月期のユーロ/ドル安値予想は1.25ドルから1.30ドルへ、豪ドル/米ドルの下値を0.82ドルから0.84ドルへ変更する。結果として米ドル高見通しが総じて弱まることになる。但しポンド強気見通しは変わらず、対ドルで年末1.72ドルへの上昇予想を維持する。


3月1日「人民元の人民銀行による中国人民のための下落」
<要約>
2月半ば以降、中国人民元が大きく下落し、一部の市場参加者はこれをリスクオフ・円高材料と受け止めたようだ。もっとも、これは中国当局による、これまで一方向の元高が進んだことで醸成された一方向の元高継続期待を打破するための計算された元安誘導という面が強い。他通貨への影響としては、経済的繋がりと通貨の連動性が高い一部のアジア太平洋通貨に売り圧力がかかるはずだが、そうはなっていない。円についてはそもそも元との相関性が低いため元安・円高という市場の反応はあるとしても長続きしないだろう。むしろ中期的に重要なのは、今後の当局の金融自由化に向けた改革の一環としての変動幅拡大で、これは結果的にアジア太平洋通貨と人民元との連動性を低下させるだろう。


2014年2月

2月22日「エンキャリ恋愛は相手を選んで忍耐強く」
<要約>
アベノミクス下での円安と、第一次日銀ゼロ金利・量的緩和期の円キャリー取引全盛期とは何が違うのかを比較してみると、前回は5年かかった30%上昇達成が今回は半年という短期間で実現した点がいかに異例な円安化だったかを示す一方、今回は金利差のバッファーが相対的に薄いにも拘らず為替の変動率が上昇時も大きかったが下落時にも大きく、金利差、為替差益を合計した円キャリー取引の総合リターンが上下に大きく振れ易く、現在のところ投資家のすそ野が広がりにくい状況だ。今後を展望すると、新興国ではブラジルレアルの円キャリー取引の総合リターンが相対的に高くなり妙味があるとみられる。


2月14日「メキシコペソ:サンライズの前にサブマリン」
<要約>
メキシコペソは相対的なファンダメンタルズの良さ、良好な人口動態やペニャ・ニエト大統領の改革意欲もあって上昇が期待され、日本も含め海外からの投資額が膨らんだ。もっとも、昨年初来あるいは今年入り後でみても、南アランドやロシアルーブルほどには下落していないが上昇もしておらず、トルコリラと同程度の下落率で冴えないパフォーマンスに留まっている。当社はメキシコペソの低パフォーマンスは当面続くとみており、本当に実力が発揮され他の新興国通貨をアウトパフォームするのは、現在のペニャ・ニエト政権の改革が実際の数字に結びついてくる来年以降になるとみている。このため今年は、来年以降の上昇に備え、辛抱強く押し目買い機会を模索する期間となろう。


2月7日「円と日銀:「黒」から「白」へ」
<要約>
日銀は黒田総裁の下で市場の期待を上回る大規模異次元緩和を行い、日銀の金融政策が円相場を動かす、日銀にとって都合の良い好循環の因果関係を生み出すことに成功した。もっとも、当社が想定する円反発リスクを考慮すると、日銀が追加緩和を行う前に円反発とそれに伴う株安が起き、インフレ目標達成を困難にするという理屈を提供するかたちで、追加緩和を誘発するという、かつての白川総裁時代の円と日銀の関係に逆戻りする可能性が高い。テーパリングの追加的なドル高効果が徐々に消えていく中、15年のFed利上げ開始までの端境期を、日銀追加緩和でしのいでいくことになるだろう。


2014年1月

1月31日「投資テーマ交錯下で浮上するポンドと豪ドル」
<要約>
最近の世界金融市場では、世界的な景気回復と一部先進国の超金融緩和政策の縮小の動きを受けて、「債券から株式へ」と、「新興国から先進国へ」という主に2つの投資テーマを基に資金が世界を駆け巡っていたが、そこへ「新興国リスク回避」という新たなテーマが加わったことで、各資産クラスや為替相場の方向性が分かりにくくなっている。このため、各テーマの通貨へのインプリケーションを整理すると、どのテーマでも負けにくい取引として、ポンド買いと豪ドル売りが浮上してくる。


1月24日「トルコリラ:TRY HARDER(もっと努力しろ)」
<要約>
トルコリラ(TRY)は高金利のため本邦個人投資家の間でも人気が広がりつつあったが、昨年中は主要な新興国通貨の中でもインドネシアルピア、南アランドに次いで大きく下落した通貨となり、今年入り後も続落している。語り尽くされた感があるリラ安要因である経常赤字とその不安定なファイナンス構造、政情不安の高まり、そして新興国から先進国への資金シフトの動きなどには大きな変化がなく、今後数か月は下落が継続する可能性が高い。但し行き過ぎの兆候も見られてきている中、本稿では今後のトルコリラ反発の可能性を探る上での注目点を取り挙げる。

1月17日「M&Aと円のポジティブフィードバック」
<要約>
サントリーによる米ビーム社の巨額買収は、単発的ではなく日本企業の今後更なる対外投資拡大を象徴するものとなる可能性がある。過去、円安と景気拡大が同時に起こり、景気拡大が企業業績を押上げ、対外M&Aや対外直接投資を増加させる傾向があり、そうした対外投資に絡む円売り外貨買いが、円安圧力になるという自己強化プロセスに繋がっていた。今回もアベノミクスの恩恵から、円安、景気改善、対外投資増、円安というポジティブフィードバックプロセスが動きつつあり、少なくとも今後数か月の円安シナリオを補強するだろう。

1月10日「ZAR:負けないで」
<要約>
南アランドは高金利通貨という魅力はあるものの、昨年中は異次元緩和を受けて大幅下落した円に対しても下落するなど、最もパフォーマンスの悪い通貨の一つで、現在も経常赤字、高インフレ、工場のストライキなど悪材料には事欠かず、売り圧力は継続するだろう。もっとも、これまでの下落で長期的にみて割安圏内に来ていること、FOMCの量的緩和縮小開始後も世界の金融市場で大きな混乱が生じている訳ではないこと、などから、対ドルでの下落ペースは減速する公算が高い。但し対円では、年央以降に円安が一服し、円が対ドルなどで反発に向かうと、下落がやや加速するとみられる。

2013年12月


12月27日「来年のカナダドル:氷河のようにゆっくり下落」
<要約>
カナダドルは今年、米ドル対比で米加金利差の拡大に伴ってじり安の展開だったが、来年も、米国対比での景気のアンダーパフォーマンス、住宅バブル崩壊懸念と低インフレを受けた低金利継続、カナダ原油価格の低迷と資金フロー面での売り圧力、カナダ中銀のカナダドル安選好、などを背景にじり安が続き、来年末にかけて対米ドルで1.12加ドルへ下落するとみられる。上振れリスクとしては輸出回復を受けた景気加速でカナダ中銀の利上げ期待が高まるポジティブシナリオの一方、下振れリスクとしては住宅バブル崩壊を受けた景気悪化と金融緩和が考えられる。


12月20日「来年のNZドル:キウイがタカになるとき」
<要約>
当社は来年、NZドルが割高なバリュエーション、市場が既に利上げを相当程度織り込んでいること、住宅バブル崩壊のリスク、RBNZの通貨安志向および米国の景気回復と量的緩和縮小を受けた米ドル高などから、対米ドルを中心に下落するとみている。このシナリオに対する最大のリスクシナリオはRBNZの利上げがどの程度NZドル押し上げに威力を持つかだが、過去の利上げ局面におけるNZドル動向を検証すると、現在市場が想定するゆっくりとした小幅な利上げではなく、急速かつ大幅な利上げが行われる場合に、利上げが当社予想に反してNZドルを押上げるリスクとなる可能性が示唆される。


12月13日「来年のポンド:大英帝国の逆襲」
<要約>
今年は低調に留まったポンドだが、来年は、先行して上昇しているドル、NZドル、ユーロの上昇が一服に向かう中、住宅市場に牽引された英国の相対的な景気堅調や金融政策の緩和縮小に向けた動きをまだ十分に織り込んでいないことから、主要通貨の中でアウトパフォームする可能性が高いだろう。長期的なバリュエーションの面でもポンドは割安の領域にあり、またこれまでのポンド安でも殆ど輸出が改善しなかったことを考慮すると通貨高の悪影響が出にくい経済構造で通貨高を気にする必要がない。インフレも依然として高めでポンド高はインフレ抑制に繋がる。ポンドは来年、対ユーロで0.78ポンド、対ドルで1.72ドル、対円で180円へ上昇するとみられる。

12月6日「来年のマクロテーマ(2)ポリシーミックスのバランスが崩れる時」
<要約>
NZ、英国、スイス、カナダ、などにおいて、低インフレの一方で住宅価格上昇が顕著となるなど、来年にかけて金融政策運営が一層難しくなるとみられる。現在のところ住宅バブル対策として、通貨高をもたらす利上げを避けて、プルーデンス政策の強化により対応し、市場の利上げ期待を受けた通貨高圧力には口先介入で対応するという、金融政策/プルーデンス政策/為替政策のポリシーミックスが行われているが、来年はこれらの微妙なバランスが崩れ、為替相場にも影響が出てくる可能性がある。中では、NZドルは住宅バブル対応で利上げを急がざるを得なくなるとみられるが、それは逆説的にNZドルの下落に繋がるリスクが高い。他方、ポンドは、住宅価格上昇に対してはプルーデンス政策が取られるだけでなく、量的緩和縮小が開始される可能性もある一方、ポンド高の弊害が少ないため、上昇余地が大きいだろう。


2013年11月

11月29日「来年のマクロテーマ(1)長期は損気」ドルへの影響力は長期から短期金利へシフト
<要約>
来年の為替市場で最も重要なイベントの一つに米国の資産購入縮小があるが、その為替相場へのインパクトとして重要なのは、単なる米金利上昇・ドル高といった面だけでなく、ドル/円においては10年金利差から2年金利差への重要性のシフトを、ユーロ/ドル相場においてはユーロ圏要因から米国要因への相対的重要性のシフトを、それぞれ引き起こす可能性を秘めている点だ。テーパリングが淡々と進行するにつれ、市場の焦点が量的緩和終了後のFF金利引上げタイミングへシフトすること、それと絡めてFOMCのフォワードガイダンス変更に関する見方が揺れ動くとみられることが、ドル相場変動にとっての米金利の重要性を、長期物からより短期物へシフトさせるためである。


11月22日「来年の豪ドル:通貨安の3つの要因」
<要約>
豪ドルは10月にかけて中国景気減速懸念と豪州追加利下げ期待の両方が後退する中で反発したが、既に目先の上昇力は尽きたとみられる。豪ドルは世界的な株高に乗れず、中国の三中全会後の改革期待にも乗れず、むしろRBA高官の執拗な通貨安誘導発言もあり下落基調に入った。来年も、中国で資源消費型の成長加速が期待できず豪州にとり重要な資源価格の伸び悩みが予想されるほか、米国の量的緩和縮小開始を受けた対米ドルでの下押し圧力、更にRBAによる豪ドル安誘導も継続するとみられる中、下落基調が続く公算が高い。豪ドル/米ドル相場は以上3つの要因を背景に、来年末にかけて0.82ドルへの下落もあり得よう。


11月15日「消されるべきヘッドライン」総合ディスインフレより資産インフレとその対応が重要
<要約>

欧州のインフレ率急低下を契機に高まった世界的ディスインフレ懸念は行き過ぎで、むしろ一部の国で高まる住宅価格インフレの将来的な金融政策対応および為替へのインプリケーションの方が重要だ。資産価格バブルへの金融政策対応の考え方には、バブル崩壊後の悪影響を最小限に抑える「後始末」を重視するFed型と、バブル崩壊前に行動を開始すべきとする「風に逆らう」BIS型があるが、既に住宅バブルに対応しつつあるニュージーランドはBIS型といえ、対応開始当初の通貨高圧力は今後利上げ開始に向けて通貨安圧力に転換しつつある。他国でも、今後資産バブル対応が政策課題となるとき、どちらの対応となるかで為替へのインプリケーションは異なってくる。

11月8日「来年のユーロ:金融政策とプルーデンス政策のコラボで下落」
<要約>
ユーロを巡る来年の焦点としては、ユーロ圏インフレ見通しとECBの追加緩和の可能性に加えて、ユーロ圏銀行セクターの包括的審査が挙げられる。ユーロ圏についてはソブリン債務問題や銀行支援に関して一定のセーフティネットが整備されてきたことから、これまでのような銀行の健全性への懸念は起こりにくくなっている一方、厳格な資産査定や高い自己資本比率の要求が、ユーロ圏銀行セクターの収益性や増資圧力への懸念に繋がり、相対的なユーロ圏銀行株価の相対パフォーマンスの低下を通じユーロ安を助長するリスクがある。ユーロ/ドル相場は来年半ばにかけて、米国の資産購入縮小の進展を受けたドル高にも助けられ、1.25ドルへ下落するとみられる。


11月1日「来年のドル/円:ブーメラン、きっと黒字は戻ってくるだろう」
<要約>
来年のドル/円の方向性を予想する上で最も重要なファクターとしては米日間の金融政策の方向性の違いとその結果としての日米名目・実質金利差の動向がまず挙げられるが、もう一つ忘れてはならない要素として、日本の対外収支動向がある。来年入り後、米国の景気回復と量的緩和縮小や、消費増税と絡めた日本の金融政策動向は引き続きドル高円安を示唆する一方、貿易収支については、いわゆるJカーブ効果の顕現化により、円安が対外競争力向上を通じて貿易赤字の縮小に繋がってくる可能性が高く、これまでの円安要因の一つに大きな変化が生じることになる。このため、季節的に赤字が拡大し易い年初を過ぎ、市場が米国の量的緩和縮小に慣れてくる年後半には、市場は貿易赤字縮小のサインに敏感になり、円反発リスクが高まるだろう。来年中、ドル/円は3-5月に105円へ上昇した後、年後半には92円への調整を視野に入れた展開となろう。



2013年10月

10月25日「FOMC:相手選びは慎重に」
<要約>

FOMCの資産購入縮小開始タイミングが市場の中心テーマである中、関連する材料に反応してドルが上下に振れる展開が続いているが、ドルの変化は主要通貨に対して一様ではない。過去のFOMC後の反応、および足許の他の主要通貨の状況を考慮すると、今回10月FOMC結果に対しては、ハト派の場合には対ポンドや対豪ドルでドル売り、タカ派の場合には対円でドル買いをするのが最も得策と考えられる。

10月18日「ドル:泣く子と議会には勝てず」
<要約>
今回の米議会の財政審議の経済・市場へのインプリケーションを踏まえ、当社がこれまで主張してきたドル/円および豪ドル/米ドルの予想を振り返る。ドル/円は、今回の米議会の混乱が想定以上にFedの量的緩和縮小開始に関する市場の期待を大幅に後ずれさせたことから、当社が想定していた米日実質金利差拡大が抑制されたため、ドル/円の年内上値目途を105円から103円へ下方修正する。豪ドル/米ドル相場も、8月中のFedの量的緩和縮小開始懸念が、当社が想定していた9月にかけての豪ドル自律反発を抑制した一方、その後の米議会の混乱と緩和縮小開始期待の大幅後ずれが、米金利低下と株高を通じて豪ドルの追い風となることから、11月にかけて0.99ドルへの続伸に繋がる可能性が出てきた。


10月11日「カナダ利上げは彼方先ではない」
<要約>
主要国で金融危機後の超低金利環境が継続して5年が経過する中で、一部の国で住宅価格の大幅上昇がみられており、住宅バブルの様相を呈しつつある。住宅価格の水準だけをみるとNZ、豪州、カナダ、スイスでは金融危機前を上回っているが、その間の経済規模の拡大を割り引いてみるとまだバブルと言えるほどになっている国は少ない。中ではカナダとスイスで経済全体の拡大と比べても住宅価格の上昇が大きくなっているが、スイスでは金融・為替政策を通じた対応余地はなく金融機関の自己資本規制により対応せざるを得ない一方、カナダでは将来的に、市場が想定している来年10-12月期よりも早い利上げ開始に繋がるかもしれない。今後のカナダドルにとって、全般的な景気動向もさることながらとりわけ住宅価格動向が重要となってくるだろう。


10月4日「TaperingはQEよりKiwiが先」
<要約>
NZドルは利上げ期待の台頭から堅調に推移しており、来年にかけて続伸を予想する向きも多い。もっとも、NZドルの水準は当局の警戒水準に達しており、かつNZドルにとって重要なファンダメンタルズである商品価格はピークアウト、貿易収支も大幅に悪化してきている。来年の利上げ開始は既に十分に織り込まれている中で、NZドルを更に買い進めるのは危険で、むしろ年末に向けては対米ドルで0.80ドル割れへの反落に向けたショートポジション造成を開始すべきだろう。



2013年9月

9月27日「キャピトルヒルのドルバーゲン」
<要約>
現在市場では、米議会の財政関連審議(来年度暫定予算および債務上限引上げ)と本邦の消費増税と法人減税の議論が注目されている。10月半ばにかけては米議会での瀬戸際政策がドル安リスクとなり、6月半ば以降の下値サポートである97円台を一時的に割り込むリスクもある。但し、本邦サイドの財政関連の議論は、来年4月の消費増税実施はほぼ決定とみてよく本邦株式市場も織り込み済みで、株安からくる円高リスクは低くなっているほか、増税からくる景気悪化のバッファーとして追加金融緩和期待も高まり易く、円安圧力も伴う。更に、一歩引いて今後数年の日米財政見通しをみると、米国の改善傾向は日本より速く、将来的な財政リスクの面でもドルの地合いは改善しているといえる。10月前半の米財政審議を受けた一時的なドル安は、格好のドル/円押し目買いの好機となる。


9月24日「ガイダンスから為替をガイドする」
<要約>
BoEが8月に金融政策に関するフォワードガイダンスを発表し、日米欧G4諸国中銀のガイダンスが出揃った。発表後の市場の反応は様々だったが、改めて4中銀のガイダンスの中身を比較検討し、G4通貨へのインプリケーションを探る。為替市場にとり最も重要なガイダンスの要素はやはり金融緩和解除条件を達成するまでの期間、すなわち現行の金融緩和が継続する期間で、その観点からは日銀が一番強い一方、BoEが最も不安定であり、ポンド高円安的といえる。今後日英のガイダンスがボディブローのように効いてくる場合、ポンド/円は180円台へ上昇する可能性も出てくる。このシナリオ実現に重要となるのは日英のインフレ統計だ。


9月13日「ポンド:対ユーロで続伸余地」
<要約>

ポンドはCarney新総裁率いるBoEが長期的な金融緩和継続を約束するフォワードガイダンスを発表したものの全く売り圧力を受けず、むしろ英国景気の相対的な回復力の強さを背景に対主要通貨で上昇している。対ドル相場は概ね英米金利差の動きに沿った動きである一方、対ユーロでは欧米金利差の動きだけでなく欧英間の景況感格差にも大きく出遅れており、今後更なる上昇の余地がある。今後数か月でユーロ/ポンド相場は0.80ポンド方向へ下落しよう。


9月2日「シリア情勢と為替相場:戦闘長期化はドル安に」
<要約>

シリア情勢を巡っては先週初にKerry米国務長官がシリア政府の化学兵器使用を断定したことで一気に軍事攻撃開始懸念が高まり、リスクオフの円高などの反応が出たが、その後は英議会の軍事介入反対やObama大統領が軍事介入の必要性を宣言しつつも議会での承認を求める姿勢を示したことで、即時開始という懸念は後退している。金融市場の反応は一旦沈静化しており、ある程度織り込んだとみることもできるが、実際に軍事行動が開始した場合には再び同様の反応が出る可能性があるほか、市場が想定する短期決戦で終わるのかは未知数だ。シリア情勢を巡り考えうるシナリオ下での為替相場の展開を検証する。



2013年8月


8月23日「ユーロ:OMTがOMGに?」
<要約>

ユーロ/ドル相場は米国における資産購入縮小開始期待を受けた金利上昇とドル高圧力にも拘らず、むしろユーロ圏景気の循環的な持ち直し傾向と欧米金利差縮小を背景に1.34ドル近辺で堅調に推移しており、9月にかけてはこうしたトレンドが続き1.36ドル程度まで続伸する可能性もある。もっとも、その後は独総選挙後に下されるとみられる独憲法裁判所によるECB債券買切りプログラム(OMT)の是非に関する判断の遅れや合憲としても条件を付ける場合には、OMT実施可能性により沈静化されていたギリシャ、ポルトガル、イタリア等での債務・政治危機の懸念への懸念が高まるリスクがあり、10月以降の悪材料として再び意識されてくる可能性がある。このため、年末に向けた1.25ドル方向へのユーロ反落リスクに備え、9月にかけてユーロは売り場を探る展開となろう。

8月16日「ドル/円:実質金利差主導で再び105円へ」
<要約>

ドル/円は5月にピークを付けたあと上値の重い展開が続いているが、米景気が現在のペースで回復を続け、9月であれ10月であれFOMCで資産購入ペース縮小が開始される場合には、ドル/円は米日実質金利差主導で再び105円に向かう可能性が高いだろう。年末までのイベントリスクとして、米国サイドでは議会における財政関連審議およびBernanke・FRB議長後任人事、本邦サイドでは来年4月からの消費増税実施如何に関する決定があるが、ドル/円相場の上昇基調を崩す決定打とはならないだろう。

8月9日「豪ドル:夕立は一日降らず」
<要約>

豪ドルは今年5月以降、対米ドルで16%下落した。米量的緩和縮小期待、中国景気減速懸念および豪利下げ・通貨安容認姿勢などが背景にあるが、これらの要因は足許で後退しつつあり、特に米FOMCが9月に資産購入プログラム縮小を開始しない場合には、豪ドルは9月にかけて0.97ドルへ自律反発する可能性がある。但し、豪ドルが再び長期的な上昇基調に戻ったと判断するには、中国景気の再加速と鉄鋼・石炭等の需要が再び高まることが必要だが、現時点ではそれは時期尚早とみられメインシナリオではない。


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